『民話の世界』
(松谷みよ子/講談社現代新書)
松谷みよ子氏の民話との出会いと、そこから重ねてきた思いが波のようにおしては引きおしては引きします。
どのページにも抜き書きしたい文があるので、とてもここには書き残せないのが残念です。
あの本もこの本も、作品になるきっかけがあり。
各地に残る伝承話、昔話を採訪し、再話してきた過程には、戦争や差別、環境破壊への怒りの感情も含まれます。
昔話には、民衆の(告発‥と言ってしまって良いものかわかりませんが)視点があることを松谷さんは明らかにしていきます。
お爺さんお婆さんが語る昔話には、生活者の視点が残されています。
そこに感動を覚える松谷さんの『心の動き』を、私たちは再話として楽しませてもらって来たのでした。
特に桃太郎と金太郎の話には、ゾッとしないものがあります。
政治利用されてきた昔話。
出版事情で捻じ曲げられてきた昔話。
それに抵抗する作家達がいたからこそ、昔話が本流に戻ってきたと。
たまたま司書仲間の一人から頂いた『おかやま桃太郎ものがたり 吉備津彦と温羅』を一緒に読んでいました。
とかくパロディに傾きがちな昨今。