「資料を探したり集めたりするのも司書の仕事です」と言っておいたら、終わってから1人の女子がやって来ました。
「私、東野圭吾が読みたいんです。図書室に本を入れてもらえませんか?」 キラキラした目でそう言って来たのです。
すかさず担任の先生が、「この子は本が大好きで、東野圭吾が読みたいってこの間から言っていたんですよ」と。
とりあえず「考えておくねー」(^∇^) と返事をして、彼女がここ3年間どんな本を図書室で読んだのかをPCで見てみました。
何ゆえ東野圭吾なのか?
『白夜行』なのか『ガリレオ』なのか、まさか『疾風ロンド』とか『新参者』?
私が読んだ東野圭吾の本はたかだか10冊にも満たないわけですが。
うーーーーーーん。
彼女は「怪談話」が大好きなようで、「ハナコさん」も「レストラン」も「色の本」、「銭天堂」も含め、図書室の低学年向け「怖い系」は読破していました。
そこからの東野ってなに?
テレビの影響なのか家族の影響なのかはわかりませんが、東野圭吾に行く前に、図書室の本でワンクッションおいても良いのではないかと思いました。
ただし押し付けるわけにもいきません。
こんな時のレファレンスはとても難しいと思います。
自分の本を貸してあげることも公共図書館から借りてくることもできますが、果たしてそれで良いのか?と疑問に思うのです。
彼女はシャーロックホームズも怪人二十面相も知らない世代です。
青い鳥文庫のジュブナイルも「はやみねかおる」や「香月日輪」すら読んでいませんでした。
多分「怖い系」と「推理小説」の違いも知らないのでしょう。
うーーーーーーん。
中学生になれば図書室には東野だけでなくありとあらゆる現代作家の本は置いてあります。
宮部みゆきのジュブナイルだってたくさんある。
『バッテリー』じゃダメなのか?
京極夏彦の絵本じゃダメなのか?
小学6年生の自分を思い出します。
角川文庫が横溝正史を映画とセットで大々的に売り出していた頃でした。
他にも松本清張、大藪春彦、大沢在昌、赤川次郎、社会派ミステリでもエロでもグロでもハードボイルドでも青春ミステリでも映画化されると皆が映画を観に行き文庫本を買いに走った時代ではなかったでしょうか。
私も6年生のうちにこれらの作家の代表作と横溝作品の殆どを読んでしまっていました。(本代だけは無制限だったので)
なので『東野圭吾を読みたい』という彼女の気持ちはよくわかるんです。
ただし、私はそれ以前にポーも乱歩もドイルもクリスティーもクイーンもヴァン・ダインも、ル・ルーもルブランも、SFの類いも、とりあえず全集やハヤカワや創元文庫なんかで読み終わっていたのでした。
それ以前にアンもジューディもハリスおばさんも四姉妹もポリアンナも小公女も少年少女ドラマシリーズの原作群(筒井康隆、小松左京、眉村卓などなどですね)も‥‥読み終わっていたのです。
年の離れた姉の本が家にはどっさりあった上に、母から岩波の子どもの本、昔話や松谷みよ子、小川未明、リンドグレーンなどをきっちり読まされていました。
最後はブロンテ姉妹の2作を読んでしまって、小学校を卒業したのでした。
もちろん早熟に過ぎた読書でしたので、高校生になって、他の日本文学、海外文学、評論やエッセイなどと一緒にもう1度や2度や3度、読み直しましたが。
何度読んでも面白いとか発見があるとか、ああこんな意味だったのかとか、腑に落ちる瞬間は何とも心地よいものです。
少々気に入らなくても、とりあえず硬いものを噛んで飲み下してから、鍛えた上でゆっくり読んでも良い本はあると思うのです。
今の小学生はジュブナイルであってもマジックツリーハウスでさえ海外の話はわからないと敬遠することもあるので、むしろ問題はそちらにあるのかもしれません。
良質なジュブナイルって今の時代、どんな本なのでしょう?
次から次へと消費される軽い読み物は沢山ありますが、その中でも何か良いものって❓
うーーーーーん。
図書室にはまだジュブナイル版の赤川次郎も江戸川乱歩もドイルもあります。
星新一はどうなのか❓
怖い系を読みたいなら、ハリーポッターだってゴーストの数は十分でしょう。
青い鳥文庫も加えて、読みやすい本を十冊程選びました。
『東野圭吾を読む前に、色々読んでおいても良いかもね。これは学級貸し出しにしておくから、クラスに置いて、みんなで読んだら?』 と言って6年生の彼女のクラスに置いて来ました。
他の司書さんは、こんな時、どうするんでしょうか?