アリスの同類

図書室からはじまる、冒険

ジョン・バーニンガム

愚者としてのわたしがそこに『WHADAYAMEAN』

地球というすてきな星
ジョン バーニンガム
ほるぷ出版
1998-10




「南紀熊野体験博」のためにバーニンガムが書き下ろしたと言われるが、日本語訳をまだ読んでいないのでそのあたりの詳細は知らない。
英語版のはじめには、「世界を変えたかった母と父へ」と書かれている。

ジョン・バーニンガムは「くものこどもたち」(Cloudland)、「いつもちこくのおとこのこ」など、ほかにも多くの素晴らしい本を出しているが、谷川俊太郎の翻訳はこの二冊でも真骨頂ともいえる素晴らしさ。

この「WHADAYAMEAN」はメッセージ性の強さではバーニンガム作品の中でも異色と言える作品かもしれない。

「くものこどもたち」でも使われた写真と絵の合成がここにも部分的に使われる。
「地球」の写真だ。

神様が何百万年もかかって地球を作り上げた時、地球は水と空気で人も動物も生きられる楽園だった。

杉の木の下で遊んでいた子どもたちを伴い、神様は自分の作った地球を見て回る。

神様が目にした地球は、汚染された海で汚れた鳥や魚、排気ガスと悪臭でいっぱいの空気。
草木や鳥や動物の家である森は伐採され、焼かれた姿。
絶滅した多くの生き物は二度と戻らない。
地球を託した人間は、最も賢い生き物だったはずなのに。

子ども達は神様から伝言を預かり、世界を回る。

金の亡者、神の使いを名乗りながら諍いの絶えない人々、武器を持って戦う兵士に、子ども達は神様からの伝言を伝える。

最後の愚者が、私には衝撃だ。

自分たちの周りで起きていることを知ろうとしない群衆。

その愚かな群衆に、「地球を救わなくちゃ。生き方を変えようよ。」と訴える子どもたち。

絵本の中で、神様は姿を見せない。
でも子どもたちにも、動物たちにも神様の存在はしっかりと見えている。


子ども達が神様からの伝言を伝えたことで、より良い世の中になった時、創造主の象徴のように上る太陽。

最後のオチがとても可愛らしいが、中身は硬派な絵本である。


自分の目で見、耳で聞き、判断したことよりも、メディアに流されてはいないか。
自分で考えることをやめ、世論という姿のない魑魅魍魎に乗ってはいないか。

考えさせられつつも、同時に幸せな気持ちになれるのが、この絵本だ。

子どもの本とは、大人にとってもなんという贈り物だろうか、と思う。

エリックカールの「"Slowly,Slowly,Slowly,"said the Sloth」(ナマケモノが最後に言い返す言葉の一つ一つが最高)
A. Birnbaumの「Green Eyes」(緑の目の猫の話。猫の過ごす1年が本当に素敵)
これに「長ぐつをはいたねこ」を図書館で借りて癒されている。

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マクヘネシーじゃ読みにくいんだよ『いつもちこくのおとこのこ』





 1年ほど前、バーニンガムの絵本『いつもちこくのおとこのこ』の朗読をさせて頂く機会があった。

原題にもなっている、主人公の名前、
『ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』と書かれた、そのままを読むことに違和感が拭えず、原書で読み直した。
「マクヘネシー」ではリズムが取れなかった。

これ程名前を繰り返すには、何か意図があるはずだ、と思っていたら。
絵本の中で主人公の名前が何度も繰り返される理由は、バーニンガムの本で解き明かされる。

『法廷では、被告人はフルネームで呼ばれるという慣習がある』

これにヒントを得てこのタイトルと文章になったのだそうだ。(私の絵本、私の人生p158より)


『良心的兵役拒否』。
バーニンガムについて調べていると必ず出てくる言葉だが、
戦時下のイギリスにこんな制度があったことを全く知らなかった。
彼の父は一度兵役に就いたのだが、
第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じ、親子2代でこの「良心的兵役拒否」を選択している。

「何でも屋」のように、トレーラーハウスで各地を回りながら様々な仕事を無償で行う。
それが良心的に兵役を拒否したものの仕事だった。

彼の作品を数多く収めたこの本には、その生い立ちについて辛かったことは何も書かれていない。

学校生活でも、売れない画家だった時も、
彼は洒落者で、ちょいワルで、そしてアーティストだった。

最初の絵本、『ボルカ』以来、強烈な主張があるように思って読んでいたが、
自伝に書かれた絵本に込められた思いは意外なほどサラッとしている。

表現しているものの豊かさと、彼自身のあっさりとした軽やかさに、ますます魅了されている。


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ひみつだから!

ひみつだから!
ジョン・バーニンガム
岩崎書店
2010-02-13



飼っている猫が夜、ドレスアップして出かけるところを見つけた女の子。

猫が夜、どこに行くんだろう?

彼女は後をつけていきます。
近所の男の子がそこに加わります。

ドレスアップした猫はいつもとひと味違います。
意地悪な犬達を上手くまいて、ドレスアップした2人と夜の街中をパーティー会場へと向かいます。

不思議な話の1番不思議な部分をばっさり端折ってお話は進みますが、読み語りを聞いている子ども達は何の違和感なくバーニンガムの世界に入り込んでいました。

猫の女王様に拝謁して、夜明けはあっという間にやってきます。

バーニンガムの面白さは理屈じゃないんですね。
だってそこが『ひみつだから!』

『BORKA 羽なしガチョウのぼうけんー』

ボルカ―はねなしガチョウのぼうけん
ジョン バーニンガム
ほるぷ出版
1993-11-01


BORKA 羽なしガチョウのぼうけんー

ジョン・バーニンガムが世に出た作品、と言っても良いかもしれない。

第一次世界大戦を経験した父が『良心的兵役拒否』という選択をしたため、彼は家族と共にトレーラーハウスで各地を転々としながら育った。

『何でも屋』のような下働きをしながら、彼もまた成人すると、父と同じく、兵役を拒否。
 
奉仕活動を課せられ様々な職に就きながら各地を転々とした。その後セントラル・スクール・オブ・アートに進学。
 
彼のテーマは27歳で描いたこの絵本に見事に凝縮されている。

『チキチキバンバン』とバーニンガムとイアン・フレミングと

わたしの絵本、わたしの人生―ジョン・バーニンガム
ジョン バーニンガム
ほるぷ出版
2007-10-01




この素晴らしい挿絵は、007シリーズで有名なイアン・フレミングが書いた、あの『チキチキバンバン』のためにバーニンガムが描いたものだ。

バーニンガムの挿絵に、フレミングは殆ど注文を付けなかったそうである。

この本の挿絵がバーニンガム、映画の脚本はあのロアルド・ダール!

『チキチキバンバン』は私が本当に小さな時、初めて映画館で観た映画で、洋画好きな母に連れて行かれた記憶がある。
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